東京工業大学(工学部)の編入学体験記
概要
■編入年次:第3学年(理学部は,第2年学年または第3学年)
■選抜方法:数学,物理,化学,英語,面接
面接では,学科により専門科目の口頭試問がある.
編入試験で最も遅い時期に試験があります。背水の陣にて受験する方も少なくないようです。難易度はかなり高いので十分に対策をする必要があります。この学校も旧帝国大学との併願にしばしば用いられます。なお,東工大は定員を定めている競争試験です。
倍率と合格基準
例年,全体で3〜4倍程度です。なお,東工大では学科に関係せずに,ほぼ試験の成績で上位から30名程度を合格者としている模様です。最近の有力な説によると,全ての科目に傾斜配点がなく,全体で約55〜60%の得点が合格ラインと言われています。したがって,化学を捨てるなどのことがないようにしてください。しばしばインターネット上で化学は考慮されないとの書き込みがありますが,東工大に限っては考えにくく,実際に合格者の出来から判断しても化学は他の教科と同様に評価されているようです。さらに,東工大の全試験は体系的に行われており,他の学部入試試験では全ての教科ごとの重みが同じという採点基準を考えると,編入試験だけを特別視するには疑問が残ります。
京都大学の発表前に試験が行われる場合,併願者が多くなると考えられます.
数学
以前は特に傾向が定まっていませんでしたが,平成16年度の試験からほぼ同様な出題がされています。 勉強すればコンスタントに高得点が狙える科目です。8割以上の得点を目標に頑張りましょう。 森北出版の編入数学徹底演習を理解していれば問題ありません。共立出版の明解演習の線形代数をやっておけば完璧です。
物理
力学,電磁気学は毎年出ていますが,問題に傾向はなく難問も数多く見られます。そのほかに,光,波動または熱力学が出題される3問構成です。東工大の物理は編入試験の中でも特出して難しいです。特に,平成20年度は院試で出題されてもおかしくないような内容でした。今年の平均点は非常に低いことが予想されるので,入試の都合上来年以降はやや易化すると見られますので,きちんと勉強しておいてください。
(1)力学
平成17年度(角運動量保存則)や平成19年度(剛体の単振動)のように易しい年もあると思えば,本年度(平成20年度)のように非常に難しい年もあります。特に,20年の(1)を証明できた人はほとんどいないと思います。
20年の(1)は質点同士での万有引力のポテンシャルは自明として良いのですが,質点と球体での万有引力のポテンシャルについては与えられていないのでこれを求めるという意図です。導出には,微小要素と三次元球座標を考え,余弦定理を用いて解くのが正しい方法です。大体の受験者は解釈を間違えていたようです。ただし,本問は大学教養程度の問題集にはよく載っているレベルです。例えば,「今井功著:演習力学[新訂版],サイエンス社,p46」を見てください。
(2)電気磁気学
前半は総じて簡単なので勉強しておけば十分点数が取れます。「山村,北側:電磁気学演習[新訂版],サイエンス社」の一冊をこなせば,編入試験で出題されるほとんどの問題が網羅できます。本年もこの本の問題が的中しました。
平成20年の問題は,電場を各成分のベクトルで表すことと,後半の問題は逆方向の電流を仮定した重ね合わせ法で解くことがポイントとなりました。
(3)波動・熱力学
波動と熱力が3年ぐらいの周期で入れ替わっています。両方勉強しておくのが無難ですが.
化学
最近は著しく易化しているので,確実に得点が取れるようにしておきましょう。 化学は勉強すればするだけ点数が上がります。最近は5割以上も楽に狙えます。大学教養程度の一般化学の教科書で勉強されるといいでしょう。負担になるのであれば,理論化学に重点を置き,有機化学分野は捨てるのもやむを得ないかと思います。
英語
間違いなく難しい部類に入ります。単語も相当覚えないと厳しいでしょう。
試験の出来と合否
合格しました.
数学:8割(行列の直交化以外は全てできました)
物理:5割(力学,電磁気は6割,熱力は4割の出来です)
化学:4割(各大問ごと4〜6割できました)
英語:6割(完璧といえるのはこのくらい・・・)
口頭試問:7割(面接に書きます)
余談ですが,合格通知に書かれていた理工系基礎科目の認定単位数が14(Max16)でしたので,私のできは余りよくなかったようです。
面接(口頭試問)
「機械科学科」では抜き打ちの口頭試問があります。注意しましょう。
まず,試験室に入る前に用紙が渡され,15分程度で事前調査が行われます。これからも,各内容はほぼ同じだと思うので予めまとめておくと良いでしょう。
(イ)事前調査(面接開始前に15分程度で書く)
・他大学の受験
・卒研の題目名と担当教員の名前
・大学へ進学する理由
・東京工業大学を志望した理由
・課外活動や趣味
・その他特筆すべきことがら
(ロ)口頭試問(白板使用可,15分間,受験者1人,面接官5人)
・電磁誘導について説明せよ(事前調査で興味のある分野に関連して出題されます)
・直径1mmのケーブルが1本ある。これを100本束ねたら直径はどのくらいになるか。
・(缶とねじを見せられて)材質と製造方法を答えよ。
・熱力学第一法則を言葉で説明せよ。また,式で表せ。
・一般に,管内を流れる流れには損失が生ずる。損失が生ずる理由を説明せよ。
・角度θなる斜面に設置されたダンパ−ばね系に外力が加わったときの運動方程式を書け。
・ダンパを取り除いた場合の固有振動数を書け。
・ダンパの減衰係数Cを変えたとき,応答はどうなるか。
・減衰係数を表す式を書け。
・周波数応答を説明せよ。
東工大編入の関連リンク
東京工業大学- 編入学試験 -・・・東工大の公式サイト